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高森明勅
2015.6.17 05:27

憲法学者は知恵を出せ?

先頃、菅官房長官は安保法制合憲論を唱える憲法学者を問われて、
僅か3人しか名前を挙げることが出来なかった。

安倍政権のブレーンと称する八木秀次氏の名前はない。

どうなっているのか?
と思っていたら、産経新聞(6月17日付)

本人がこんなことを書いていた。

「(安保法制関連法案と)憲法との矛盾は誰でも指摘できる。
しかし、
わが国は生き残らなければならない。

…矛盾を矛盾と知りつつ、
知恵を出すのが常識ある憲法学者の役割ではないか。

世の嘲笑の対象になることは避けなければならない」と。

いつもながら「正直」な人だ。

安保法制と憲法が「矛盾」すると言い切っている。

ということは、私の想定とは違い、彼は違憲論だった。

でも背に腹は替えられないのだから、
世の中の「常識ある憲法学者」よ、何とか知恵を出してくれ、
と訴えている(懇願、哀願している?)。

ということは、これも私の想定とは違い、
八木氏本人は憲法学者ではなかった、
と見なければならない。

もしご本人が憲法学者なら、中国の脅威を前に
「安保法案あげつらう余裕はない」なんて、
立憲主義を真正面から踏みにじる暴論を掲げていないで、
自ら率先して知恵を出して見せるはずだから。

なるほど、菅官房長官が八木氏の名前を出さなかったのは、
当然だった。

彼を“合憲論”の“憲法学者”と錯覚していた、
我が不明を恥じるのみ。

それにしても、知恵を出さねばならない理由が振るっている。

「世の嘲笑の対象」になるのを「避け」るため、だと。

この人物の本音がよく分かる。

だが、およそ学者たる者の最低限のモラルは、
たとえ世の嘲笑の対象になろうと、
あるいはその他諸々の不利益を被ろうとも、
己れが真実と信じることだけを述べる、という一点ではなかったのか。

「曲学阿世」という言葉を久しぶりに思い出した。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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